詩から数日後

谷川俊太郎さんが詩んだので、今後、新作が減る(未発表作品が定期的に出るよね)

僕の空洞になった頭と胴体に谷川さんの詩の文字たちを落とす

谷川さんが細い鎖のついた眼鏡をかけて朗読する声を脳内で再生して読む

詩のボクシングの『ねじめのけじめ』の「ねじめじめじめ はしため いじめ」の悪戯っぽい声を思い出す(ふふっ)

死んだことで詩の見え方が変わる

『ネロ』は近所の犬の死だけど、ネロが谷川さんになる

死についての詩が多く感じる。おっぱいにふれた詩の数は変わらないのに

晩年は自分の死を想っているけれど、

若いころの死の詩には自分が勘定されていないな、とか

いつものように優しくなり、特別に悲しくなり、微笑み、少し涙目、でもやはり全体的に幸福

谷川さんは僕を知らないし、僕を愛していないから、僕は孤独を感じない

孤独は僕を愛する者がいなくなることで感じる

孤独は僕が愛することとは別

僕は車にひかれた猫を愛するけれど

車にひかれた猫は僕を愛さない。死んでいるから今後も絶対に

僕を死んでも愛さない車にひかれた猫たちに囲まれていることを思い出して孤独が包むことで一瞬にして汗ばみ強張って全身が熱く冷たくなる

谷川俊太郎さんや車にひかれた猫を愛することで

足元の底の見えない孤独の大穴は埋まらないけれど、孤独の大穴の上で浮遊することができる

服についていた抜け毛を孤独の大穴に掃う