夜桜
少し離れて猫が毛づくろい
夜桜の花の色をよく見ようと上を向いたら
猫も気になったのか上を向いた
ふふふ
でも猫は桜を見ていない
猫は何を見てたのと不思議そうな顔してる
聞こえないかもしれないけど小声で桜を見たんだよと伝える
猫が立ち去るまで一緒にいたくて欄干に寄りかかってのんびり
冷たい風が吹いて車にひかれた猫が気になる
猫のいない方向に歩く
そして車にひかれた猫
仰向けで死んでいる
僕も夜空を見上げる
足元の車にひかれた猫がかすかな声で違うよ、虚空を見ているよと鳴く