夜空も暗い道もなくなって
車にひかれた猫と僕だけ
ちょっと寒い
車にひかれた猫も僕も全身ひんやりしている
この肌の冷たさを 9 月に思い出せるように集中して記憶する
車にひかれた猫に 9 月の暑さを思い出せるのと聞かれる
思い出せるけれど
すごく遠くて
暑さが暑くないな
さらに遠くの悲しかったことや嬉しいことを思い出す
もうずいぶん小さい
それでも心臓を少し締め付けるし
じんわり暖かくする
聞かせられる笑い話はなにかあるかな
じゃらじゃらあるけれど
どれも欠けていて歪で小さいな
もっと探せばありそう
星の王子さまを見つけたからお話してあげようか
どこがいいかな
壁に上がっていて足元に蛇がいるの
ともだちが欲しがった狐と何が違ったんだろうね
そこじゃなくて
井戸の水を探して飲んだ話がいいな