冷たいけれど温かいぼたも血

バスのエンジン音で目を覚ます

ニンゲンが三人いる

まったく気づかなかったことが怖い

重い体を起こしてバス停のベンチから立ち去る

コンビニでスマホを充電して和菓子屋さんを探す

開店少し前に着く

シャッターを明けた笑顔が

野宿明けのぼさついた髪と裸足に怖張る

ぼたもち 2 個と

みたらし団子、よもぎ団子を 1 本ずつ素早く注文してダッシュで出る

三色団子は可愛いけれど、いつも何か味が足りない感じ

誰もいないお寺でお団子ブレックファースト

ぼたもち一口目

もちーっ

おいしい

二口目

おいしい、おいしい

二本足で立つ 69 センチくらいの血まみれ車にひかれた猫が僕を無視してぼたもちをじっと見ている

ぼたもち食べる?

車にひかれた猫がさっと近づき裂けた腹にぼたもちを入れる

仔猫とかに持って帰るのかな

食べかけのぼたもちもあげる

みたらしとよもぎの串を外す

車にひかれた猫はすぐに走ってどこかへ消える

串に残っただんごをかじり、なめる

お腹空いた

ぼたもち二口だからまた買いたいけれど

さっきのお団子屋さんは迷惑だろうな

コンビニやスーパーでも売っているけれど

この時間はニンゲンが多いから騒がれたりスマホで写されたりして嫌だ

すごく固い何かで後ろから肩を叩かれて心臓と体を跳ね上げる

振り返るとぼたもちを持ったお地蔵様

ちょっと乾燥して少し固くなっているけれど、誰かからもうぼたもちはおいしいな

甘くなった口を冷たい手水がすっきりとした甘さにしてくれた