山に埋めた携帯電話が胸ポケットで鳴り続ける。
その音で眠れなくてどうすれば消せるか考える。
電源を切れないなら会話するしかない。
耳を澄まし大声で叫べば聞こえ届くかもしれない。
だから約束の地×に行くことになった。
昼間の街を歩くのは久しぶり。
進行方向に太陽があって強烈に眩しい。
何もかも白くて異常な感じ。
地底湖や海底にいる白い生物と違う不気味さ。
携帯電話が鳴っているのか記憶の音が聞こえているのか分からない。
どこだっけ?
どこに行くんだっけ?
最初からどこか分かっていなかったのにその場所の映像はあった。
多分、それは僕の想像上の理想の場所。
電車や飛行機じゃ行けないところ。
歩いても辿り付けないけれど近づくことはできる気がするところ。
車にひかれた猫を持っていない。
その場所の想像をしていたから見過ごしていたかも。
あああ。
なんてことだ。
もっと大騒ぎするべきだよ。
夕日だ。